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御駄物な話

伝統的な技法を駆使して天上天下唯我独特なデザインを生み出す駄な物づくり哲学

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「漆塗のフィギュア パート2」

 去年の仙台三越さんで販売した30万円弱のウルトラマンのフィギュアが良い結果を残したので、漆塗りフィギュアの次の商品が決まり去年の夏ごろに受注が始まりました。
ミッキーマウス、ウルトラマン、それに続く漆フィギュアは日本が誇る巨大ロボット「マジンガーZ」です。
なーんだガンダムじゃないのかって思っているあなた!
マジンガーZは世界で驚くほど知名度が高い。
アメリカでは「トランザーZ」の名前で放映されている。
ヨーロッパではマジンガーZの続編である「グレンダイザー」が驚異的な人気で、多くのヨーロッパの国では自国のアニメだと思っているそうだ。
そんな理由で漆塗りのフィギュアを海外で販売していきたいと考えている我々は「マジンガーZ」をセレクトしたのです。

 今回は広報に徳間書店、販売はメディコムトイ、フィギュア製作はマーミットという最高のチームがサポートしてくれました。
漆のディレクションは僕が担当し、漆塗りは伊藤君。サンプル製作では新しい技法である「割れ塗り」を試してみたが、立体の物には綺麗に仕上がらず断念。
黒をベースに、朱と金を使った仏壇カラーで商品化にこぎつけました。
徳間書店で発行している「キャラクターランド」の巻頭4面特集で大々的に紹介していただき、サンプルは銀座にあるメディコムトイさんのショウルームにて展示、それをネットで配信。
税別45万円という超高額商品でしたが20体の注文をもらえました。
その多くはアメリカからの注文だったっていうので再び驚きました。

 リスクがないように受注生産の方法をとってもらい、現在8割完成済み。
現在、残りの2割を伊藤君が岡崎の工房で塗っています。
最近思うのは20体くらいしか作らないのならマーケットの理論は全くあてはまらないってことです。
一般的には45万円はのフィギュアは高いですが、5万円のフィギュアだって高い。
はたして5万円に技術を落としても大量に売れるとも思わない。
最高の技術を使うから値段も高いなら納得できるはずです。
しかし、個人の力ではそれをさばききる能力はない。
協力してくれる企業さんの情報発信力が販売にはつながっている。
物をつくる僕たちがやることは、協力してくれる企業さんが本気になってくれる商品をつくること。
物の価値は物が決める。
溜息がでるような商品を提供することで一歩一歩階段を上がっていけるような気がしています。

 次回の漆塗りフィギュアの試作を現在製造中。情報解禁になったらまた報告します。
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 ©ダイナミックプロ/マーミット/メディコムトイ/徳間書店

「テレビ型仏壇・テトセ」

 仏壇って何のためにあるんだろう?
根本の理由に向き合わなければ仏壇デザインをやる必要がないと僕は思っています。
デザインってただ形をお洒落にするだけにあるわけではない。
なぜ、その形にするのかって意味付けこそが大事である。
コンセプトやストーリーがあってデザインは生まれる。
そして、完成した物がデザインを通じて消費者に語りかけるのです。

 仏壇の前で人は見えない何かと語らう。
こんな日本の美しい光景を仏壇は作ります。
通知表を学校から貰うとお仏壇にお供えします。
果物やお菓子を一度仏壇に供えてから、「お下がり」として家族で食します。
仏壇は目に見えないが、確かに存在した祖先を繋いだり、仏に感謝をしたりするためには無くてはならない物であるはずです。
そこで僕は「仏壇とは先祖や仏様と交信をする箱である」と言う定義を作りました。
そして出来上がったのがテレビ型仏壇です。

 実は10年前にこの仏壇を作るにあたって、あの世とこの世をつなげる箱である仏壇を使ったミステリー小説も製作しています。
その小説のタイトルが「テトセ」だったこともあり、商品名もテトセにしました。
その小説もとあるコンクールに送った所、最終選考の一歩手前までいきましたが、そこ止まり。
完全にお蔵入りになりました。
その後、この小説がきっかけで「あの世の歩き方」ってイラスト本を出版することになりました。
話が脱線しましたが、この仏壇は小説を書くことができるくらいのコンセプトを持ったものです。

 このデザインのフォルムは1950年時代のアメリカのデザイン「ミッドセンチュリー」を意識しています。
あえてテレビをレトロなデザインにすることでモダンさを出しています。
アンテナを付ける事であの世からの電波をキャッチするというコンセプトをビジュアルで表現しています。
仏壇内部はかぐや姫のお話をモチーフに彫刻を製作しています。
かぐや姫を月の使者が迎えに来るシーンってあの世からの美しい迎えを僕の中で連想させました。
なので仏壇の彫刻にはぴったりだと僕は思って使いました。

 年末年始、仏壇に向き合う時間をぜひ作ってください。
仏壇に手を合わせて、どうぞ語らってください。
一年間の報告、そして新しい一年の抱負。
そんな会話を先祖も仏様も楽しみにしていますから。
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「武壇-budan-」

 三河に生まれた男なら誰でも戦国武将に憧れる…はずです。
僕もその一人。
僕は戦国最強の本多忠勝公が推し武将です。
なんといってもあの忠勝公の甲冑はヤバすぎる。
デカすぎる大鹿角の脇立てに心を射抜かれています。
言い忘れていましたが、僕は角がやたら好きです。
ウルトラマンで誰が好きかと言えば角があるタロウか父と答えます。
という事で今回紹介する作品「武壇」は僕の角好き&戦国から生まれたものです。

 「武は矛を止むるをもってす」なんて言葉がありますよね。
諸説ありますが、武器というのは戦いを止める道具であるという意味が主流です。
僕もこの考えが好きだし、日本の武士道っぽい。
特に三河武士の代表でもある徳川家康公は人を極力殺さなかった事で有名です。
大量虐殺をした信長公や秀吉公とは全く違う長期平和政府を作ったのは、武と権力の解釈の違いからくるような気がする。
また戦国武将の兄弟や親戚は僧侶になる者も多かった。
人を殺さなければならない武将と殺した人を弔う僧侶はワンセットになっていたのだろう。
まさに「剣禅一如」の世界。
この思想は今でもしっかり残っている。
以前三重県の郷土資料館に行った時に漁師さんが祀っていた魚供養用の位牌を見た時にはビックリした。
また反捕鯨団体の方を鯨供養している日本の神社に連れて行ったニュースがあったが、捕鯨国である日本の方が鯨に対して深い愛情があると供養する姿から理解したようだ。
僕は供養の本質は「ありがとう」と「ごめんなさい」の間の感情だと思っている。
またそれが命をいただいて「生きる」という行為すらも表現しているのではないだろうか?

 日本の武具は他国の物と違って、美しい物が多い。
身を守るだけだったら角を付けたら邪魔だと思うが、そこが日本の美意識だろう。
戦いには無駄だけども、カッコ良さも求めちゃう。
それって粋だよね。
伊達正宗公の有名な三日月がついた兜は刀を振り下ろす方がちゃんと短くなっている。
日本の工芸でよく言われる「用の美」ってヤツを守っているから凄いよね。
お洒落な男を「伊達男」なんて言うのもわかるような気がする。

 実は仏壇の屋根に角を付けてみたら、驚くほどバランスが良い。
ニューヨークで個展を開催した時に展示したら「日本ではこれを拝んでいるのか?」って質問されてしまった。
それくらい普通な感じがしたのだと思う。
そして見せ方次第では仏壇が海外で通用するんだって手ごたえを感じた作品でもある。

NY個展のチラシ

一年間ありがとうございました。

2015年も残りが数時間。
今年の年末は仏壇屋の仕事が少なかったので気合の入った掃除ができた。
綺麗な空間は心も綺麗にしてくれるような気がする。

僕なりに今年を振り返る。
新しい壁と向き合う一年だった気がする。
アートマンの立ち上げの時のような、悩み苦しみ、その中から希望を見つけだした一年でした。

今年の仙台三越での初売りで漆塗りのウルトラマンが想像を超える注目度を浴びたことで、
漆の新しい可能性を感じれた。
それに続く漆塗りのマジンガーZも数十万という高額商品にも関わらず海外を中心に売れた。
当然ながら、携わっていただいた方々のお力が強いのですが、暗かった伝統の未来が少し輝きだした気がした。
何より、漆塗りの伊藤くんの技術が多くの人に認められたことが嬉しかった。

もう一つ新技法の漆器も徐々に注目度を高めてきた。
武藤さんと一緒に試行錯誤しながら数年間やってきたことが徐々に花開こうとしてしている。
新しいことは理解してもらうまで時間がかかってしまうのだけども、何とか来年は大きく飛躍させたいと思っている。

個人としては名古屋芸術大学で非常勤講師をやることになり、教えることのむずかしさを感じた。
今までのトークだけでは通用しないんだと反省、トーク力はもっと磨いていきたいし、伝えるワザを工夫していきたい。

デザインは自分の中で少し自信を持てるようになった。
特に廃棄仏像と流木や廃棄仏壇パーツを組み合わせて作る「ロスト」シリーズは作品数が80を超えてきた。
そろそろ発表してもいいかなと思えるようなスタイルを確立できそうだ。

振り返れば面白く、苦しい一年でした。
来年こそ「新しいジャパンを作る!」一年にしたいと思っています。

それでは一年間ありがとうございました。
引き続き、よろしくお願いします。
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「ポップカルチャー仏壇」

 最近、にわかに僕が作った過去の作品が注目されて久しぶりに取材をちゃんと受けた。
その主役がロボットのような形の仏壇です。
数年前に週刊ポストにこの仏壇が掲載された時に記者さんがポップカルチャー仏壇として紹介。
それ以来、その名前が定着してしまったのが、このロボット型仏壇です。

 この仏壇は古い仏像の構造をモチーフにしている。
そもそも、古い仏像には胎内に小さな仏像(胎内仏)や経文を納めるスタイルが多い。
そんなわけでお腹の部分に仏像を安置できる構造になっている。
まるで巨大ロボットのコックピットみたいです。
ロボットも操縦者がいなければオブジェにしかならない。
仏像や仏壇だって同じです。
その中に入れる物の方が大切になってきます。
ちょっと余談ですが、東日本大震災の揺れでとあるお寺の秘仏が壊れてしまい、僕の所に修復依頼がきました。
この仏像にも胎内仏や経文が入っていた形跡があったんですが、時代の流れの中で紛失してしまったようです。
修復した記念に住職の許可を得て、小さな仏像を僕が彫って秘仏の胎内に収めさせてもらっています。
それと同時に震災からの復興を願う人の名前を記帳した巻物を台座に奉納してあります。
それぞれの思いを込める。
それがロボット型仏壇のコンセプトでもありました。

 なぜ、仏壇とポップカルチャーを融合させるのか?って思いますよね。
実は製作にあたって常に意識している戦略があります。
仏壇の技術を他産業へ転用したいってことです。
当然ですが、このロボット型の仏壇は玩具産業を意識して作っています。
実は8年くらい前に作ったこの製品が人をつなげていってくれて、「ウルトラ木魚」や「漆塗りのウルトラマン」などに展開していっているのです。
デザインモチーフにかなり影響を受けたベア@ブリックを作っているメディコムトイさんと現在一緒に仕事をしているようになるなんて当初は考えられなかった事です。
きっと製作当初は僕の道楽だと殆どの人は思っていたはずです。
道を切り開くのに大切な事は自分の感性を信じる事だと思います。
誰も歩んでない道を進む時は多くの人は反対するし、もちろん多くの失敗もする。
でも何があっても自分の責任って覚悟があるから進めるよね。
逆に覚悟のない人は進んじゃダメだ。

 8年くらい前にやってきた事が今頃注目されるって事は、やっぱり何をやるにも10年辛抱しなきゃいけないなって思う、今日この頃です。
そして、いつかロボット型仏壇が自力で歩いてきて強制的に拝ませる機能を取り付けたいと思う、今日この頃です。
ロボット仏壇