御駄物な話

伝統的な技法を駆使して天上天下唯我独特なデザインを生み出す駄な物づくり哲学

2016年07月の記事

「嘆きの牛 後半」

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 2012年3月12日に福島県浪江町にある「希望の牧場」に牧場主の吉沢さんの案内で大川興業の大川総裁と一緒に訪れました。
その日に伺ったのは東京電力福島第一原発が水蒸気爆発を起こした1年後だったからです。
311は気仙沼で過ごし、そのまま車で南下して福島入りして翌日浪江町にある牧場を案内していただきました。

 実は20キロ圏内の立ち入り禁止区域に入ったのは2度目です。
最初は2011年6月上旬に大川総裁から電話で、ハワイから放射能除去の新技術を持ったチームが来ているので除染テストに付き合って欲しいと依頼があり、ドライバーかねて福島へ行きました。
僕の初被災地は20キロ圏内だったのです。
芸人って物は何でも貪欲にやらなければダメだという総裁の信念に巻き込まれる仏壇職人です。

 浪江町にある希望の牧場の入り口には東京電力の悪口と共に牛の頭蓋骨が何個も吊るしてありました。
当然、立ち入り禁止区域なので誰も通りません。
誰かに見てもらいたいのではなく、自分の怒りを表現したかったのでしょう。
吉沢さんはその怒りを聞いてもらいたくて今でも定期的に渋谷のハチ公前で街頭演説をしているそうです。
その時に牛の頭蓋骨を持っていきたいと言っていたので、漆を塗ってみませんか?って提案したのです。

 徳川美術館に加藤清正が退治したトラの頭蓋骨が展示されています。
それには真っ黒な漆が塗られています。
漆は数千年前の遺跡からも出土するほど耐久性の高い塗料です。
実際400年ほど前のトラの骨に漆を塗る事で劣化を防いでいます。
この牛たちも震災後の原子力発電所の事故で死んだという歴史の証人であり、後世に伝えなければいけない大事件でもあります。
漆を塗る事で美しく、そして時間を止めることが可能です。

 僕はけっして原発反対派ではありません。
大飯原発が再稼働する時も3日後に現場を見に行ってきました。
原発反対とどんちゃん騒ぎしていた若者は一人もいなく、主婦らしき人が5人座って抗議していました。
テレビでは分からないことが現地にはあります。
現地に足を運び、現地の空気と問題を感じ、僕は作品に思いを込める。
しかし、悲しい出来事があったことを、またそこで苦悩している人がいることを忘れてはいけないと思っています。

*写真の作品は福島県浪江町でいただいた牛の背骨と仏像の光背を組み合わせた作品です。
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嘆きの牛 前半

漆牛

 この作品は2012年3月12日に福島の浪江町に行った事から始まります。
僕は2011年3月11日に発生した東日本大震災の巨大津波で傷ついた位牌を直すボランティアを行ってきました。
そのアイデアって言うのか指令をいただいたのが江頭2:50さんが所属する大川興業の社長であり芸人の「大川総裁」です。
江頭さんがトラックで物資を運んだってのは有名な話なのですが、総裁は全ての被災地の小さな漁村まで訪れ、現地のニーズを聞き出して的確な支援をしていたのです。
被災地を歩いた総裁が目にしたのが傷ついた位牌だったという訳です。
「都築さん、何とか位牌を直してあげてください」って言う電話から、大川興業ボランティアに巻き込まれていくことなりました。

 福島の浪江町は東京電力福島第一原発から20キロ圏内にある町です。
当然ながら当時は完全に立ち入り禁止地区でした。
一般人が入れない地域で吉沢さんという方が今でも牧場を経営しています。
誰もから見捨てられた牧場の名は「希望の牧場」です。
吉沢さんとの出会いは全くの偶然でした。
僕と大川総裁が支援物資を届けに行った場所に偶然来ていたのです。
吉沢さんが現場をぜひ見てほしいと言う事で吉沢さんの運転で20キロ圏内にある希望の牧場に行きました。
当然ですが、道中すれ違う車はありません。
途中にあったコンビニの店内は震災発生時のまま。
人だけが消え去り、時が止まった町を抜けて人里離れた山の中に牧場はありました。

 牧場に100頭を超える牛が元気そうに放牧されていました。
その当時の政府がある決断を決めたことによって吉沢さんの戦いが始まったそうです。
20キロ圏内にいる家畜は全て殺処分にすること。
しかし、吉沢さんは我が子のように育てた牛たちを殺すなんて出来ないと牧場経営を今でもやっています。
殺処分の命令がでている動物にエサを持ってきてくれる業者はいません。
吉沢さんは自分のトラックに積めるだけのエサを運ぶのですが、十分な量を確保はできない。
その結果、力ない牛が死んでいってしまう。
これも一つの震災被害なんだろう。
人間だけではなく、動物も供養してあげられるオブジェを作れないかという吉沢さんの要望で現地に大川総裁と入っていったのでした。

(後半へ続く)
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