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御駄物な話

伝統的な技法を駆使して天上天下唯我独特なデザインを生み出す駄な物づくり哲学

過去ログ

金箔メガネとイケメン彦左

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 今回は地元の祭りとのコラボ企画のお話です。
僕が住んでいる愛知県幸田町には町民を熱狂させる「彦左祭り」が7月の最後の土曜日に毎年開催されています。
幸田町にこんなに人がいたのかって思うくらい幸田駅前通りが人で埋め尽くされます。
名物は大久保彦左衛門の仮装パレード。
幸田町の商工会の理事なんてやっている僕がそのパレードの先導をするってのが毎年恒例になっています。

 そんな祭りも20周年を迎えた時に「何か新しい企画をやりたいよね」って緩い感じで僕の所へ商工会職員が相談に来ました。
条件は低予算で宣伝効果抜群のもの。
予算があったら僕の所になんか来ないで、タレントでも呼べるイベント屋に行くもんね。

 僕は何でも一度バラバラにして戻す行為が好きです。
彦左祭りの主役は天下のご意見番・大久保彦左衛門。
仮装行列でもメガネかけたお爺さんサムライの姿になります。
ちょうど「メガネ男子」なる言葉が流行していた時期でもあり、若かりし頃の大久保彦左衛門もきっと素敵な「メガネ男子」だったんだろうと想像していたら、企画ができあがりました。
「21世紀に蘇る大久保彦左衛門はイケメンのメガネ男子だった」という設定で彦左祭りのキャンペーンボーイを募集することにしました。
その優勝商品で作ったのが金箔メガネです。
メガネはやっぱりカッコいい物がいいと思い、名古屋大須のカリスマ眼鏡ショップ「モンキーフリップ」さんに協力いただいて、ちょい悪メガネに金箔を貼りつけた「イケメン彦左モデル」を開発しました。
http://monkeyflip.co.jp/

 準備万全で企画を動かし始めたのですが、はたしてこんなバカ企画に応募してくれるメガネ男子はいるのだろうかって常に不安でした。
ふたを開けてみると、何と数十名も応募があった。
人口4万人の保守的な幸田町では驚きの人数でした。

 僕は有名人を呼んで人を集めるやり方よりも、地元の人が参加して祭りを盛り上げるやり方のが正しいと思っています。
地元の祭りは長く続けることが大切です。
地元の活性化とかいうと、つい地元愛が強すぎて多くの人は頑張りすぎてしまう。
魅力ある企画ってベースが馬鹿であることだと思います。
その馬鹿な企画をどう現実に実行できるかに落とし込むかを何度も頭の中でシュミレーションするんです。
そうすれば何パターンも気が付けば企画ができているはずです。
もう一つ大事なのは継続できる事かな。
ゆっくりと地元の人だけが楽しむ小さな祭りってのもいいと僕は思います。
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「人が入れる仏壇・カンタカ」

 15年近く前に製作を開始して、いまだ未完の作品が「カンタカ」です通称「人が中に入れる仏壇」、これを作ってから僕の人生が一変してしまった御駄物代表です。

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 実はカンタカは仏壇の新商品として生まれています。
アートとか芸術、工芸作品を作るつもりは全くなかった。
売る事を目的にして製作が開始しています。

このカンタカは仏壇にとって画期的な事を提案しています。
仏壇として巨大ですが、中に入ることで設置する空間を極端に小さくできるのです。
通常、仏壇は仏間に置かれます。
仏間の空間は仏壇の何倍もの広さを必要とします。
このカンタカは祈る人が中に入るので、そのスペースだけ確保すればいい。
祈りの空間から考えれば革新的に小さくできています。
イメージとしてはトイレとかお風呂みたいにユニット化された仏間を仏壇の技術を使って作ったと考えてもらえれば良いと思います。

 ちなみにここまでデザインもコンセプトも変えてしまうと仏壇職人が作れないと言いはじめます。
なので僕は立体模型を製作したり、原寸大のパーツの図面を書き穴の位置まで指定しました。
嫌がる職人さんが断れないようにすることで、仕事をしてもらっています。
また図面や立体模型を作ることで自分の知識も随分向上できました。
この頃は親父が付き合っている職人に仕事を依頼していたのですが、新しい事をやるには自分に年齢が近い職人が良いだろうと自分で職人もセレクトしました。
その後、それが若手職人集団アートマンジャパンを設立するきっかけにもなりました。
http://artman.tv/

今でも変わらないのは伝統を守ろうって意識は全くない。
変わりゆく現代に伝統をどう変化させて、次世代に残していくかばかりを考えてきました。
そして仏壇はなぜ必要なのかも、常に向き合っています。

仏壇って日本にしかありません。
先祖崇拝って考えがベースだと僕は思っています。
我々が生きているのは先祖のおかげであり、亡くなられた先祖は我々の守り神になってくれている。
そんな先祖が我々と一緒に暮らす場所として最上級の場所を用意しておく。
それが豪華な仏壇が生まれたきっかけだと僕は考えています。
手を合わし祖先と会話をする場所が仏壇であるのならば、中に入ることで守り神と一体化できるカンタカは僕の中で最上級の場所だと考えています。
ちなみにカンタカとはお釈迦さまが出家する時に乗っていた愛馬の名前です。
新たな仏縁を作るツールとしてカンタカと名付けさせてもらいました。

「木魚ヘッドフォン」

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 ウルトラ木魚を作る数年前にちょっと斬新な木魚を作っています。
それが木魚ヘッドフォン。
自分の中でも結構好きなデザインの一つです。

 木魚ヘッドフォンの企画を考えた頃、今では当たり前になっている物が世間を席巻していました。
それがi-Phoneとi-Padです。
いわゆるタブレット端末が出始めた頃にデザインの概要ができています。
このタブレット端末の登場は僕にとって、スマートな未来を予測させました。
将来、経本がタブレット端末に内蔵されて、お坊さんが横スクロールしながらお経を読む時代が来るなんて葬儀の未来を勝手に予測してしまったのが原因です。
木魚を未来風にスマートに持ち歩くにはどうしたら良いのだろう?
この疑問が御駄物な物が生まれる瞬間でもある。

 僕は0ベースにして物を考えるのが好きです。
木魚とはそもそもお経のリズムをとる楽器みたいな物です。
何より音を大切にします。
現代で音が鳴る物と言えば、スピーカー。
タブレット端末と組み合わせるって発想があったので、自ずとヘッドフォンにデザインが向きました。
ヘッドフォンなら首からかけて持ち歩けるし、わりと大きいサイズの物も売れているので作りやすいと思いました。

 デザインは木魚そのままにしました。
真ん中から木魚を真っ二つに割ったデザインの物をヘッドフォン本体に張り付けて試作品を製作。
この試作品に使ったメーカーは当然「BOZE(ボーズ)」。
音の良さのさることながら、木魚ヘッドフォンにはぴったりのネーミングのメーカーだったからです。
ちなみにボーズの商品開発部門に木魚ヘッドフォンの商品化の話をしたことがあります。
残念ながら商品開発の権限はアメリカの本社にしかないと言われてしました。
ボーズの固い商品ラインナップに木魚ヘッドフォンが並ぶことはなかった。
出ていたらまた多方面の方々から熱過ぎるご指導を受けることになったのは間違いないだろう。

 物づくりをやっている人間は常に未来を見ているべきだと思う。
否定されるということは大切です。
この時代に合わない証拠である。
そして受け入れられる時代が来た時が勝負の時。
それまでご指導を受けながら、コツコツ物づくりをやっている。
それが偽物が本物と評価が変わる時でもある。

最初から褒められるつもりでいたら御駄物は生まれないって愛犬ビッテが言っている。
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「デザイン哲学:生きるって全て遊びなんだよね」

 御駄物な話も10話目に突入したし、そろそろ僕のデザインの内面について書いてみようと思う。
伝統的な仏壇で木地を製造する時に重要になってくるのは「遊び」と呼ばれる1ミリ以下の隙間を作ることです。
なぜそうするのかと言うと、木で作った仏壇は漆を塗らなければいけない。そ
の塗りの厚みを考えて作らなければ完成時に綺麗に仕上がらないんだよね。
その隙間の遊びを知らない他業種の職人が作るとパーツの見た目は良いけど、組みあげてみたらおさまりが悪いなんて事がある。

 世の中がデフレになった頃から「無駄」は悪いことのように言われてきた。
駄の無い世界は機能的かもしれないが、僕にとっては面白味がない。
無駄をそぎ落としてスタイリッシュなデザインを求めるのはクールなんだろうが、僕は好きじゃない。
何かお洒落の押しつけみたいな気がする。

 日本人の美意識に詫びとか寂びがある。
それとは別に粋って感覚もある。
詫び寂びは貴族的、粋は庶民的なお洒落って感じを僕は感じています。
なんとなくわかると思うんですが、僕は粋な感じが好きなんです。
粋な文化は詫び寂びと比べれば断然下品です。
でも粋って言うくらいだから生き生きとしている。
粋の文化にはやっぱり遊び心があるんだと思う。
その遊び心に庶民はワクワクするんだと思う。

 僕が政治の手伝いをしていると「彼は政治家」を目指しているんだって勘違いする人がいる。
僕にとっては政治家の手伝いも遊びなんです。
被災地ボランティアだって僕にとっては遊びの延長上。
現地に行って知り合った人と酒が飲みたいだけだったりする。
その遊びの中で学ぶことが沢山ある。そしてその遊びが視野を広くしてくれるし、気持ちが熱くなりすぎるのにブレーキをかけてくれる。

 職人は頑固じゃなければいけない。
ある意味で正解だし、ある意味では間違いだと思っている。
技術についてはストイックに守り抜いていく必要があるが、作る物は挑戦しつづけていかなければいけない。
そこに必要なのが遊びという心の小さな隙間だと思う。
僕の仕事場にはくだらない玩具がいっぱいある。
駄は一日してならず。
常に面白い事にアンテナをはっており、面白いことを見つけたら角度を変えて色々な方向から見直す。
視点を変えることで古いものが新しく見える場所がある。
その一瞬を見つける為に沢山の知識を頭にいれる。
無駄こそが新しい物を生み出す源だと僕は考えている。
だから遊ぶのだ。

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漆×マジンガーZ

本日発売のキャラクターランドにて「漆黒ソフビ マジンガーZ くろがねの城バージョン」が4ページわたって特集されています。
伊藤くんが制作する漆塗りの工程など結構詳しく紹介していただいています。
ポップカルチャー×伝統技法が少しずつ形になってきました。
妄想的クールジャパン戦略がジワジワ浸透中!
この商品は受注生産にて一般販売もしております。
購入方法等は本誌にてご確認ください。
http://hyperhobby.jp/?page_id=4194
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